海外FXの法人化は税金対策になるのだろうか?
海外FXを法人として行った場合、税金はどのように変化するのだろうか?
「海外FX 法人化」と聞いて上記のようにお悩みの方も多いのではないでしょうか?
結論から言うと、海外FXを法人として行うことで利益にかかる税金は安くなります。
しかし実際のところ、法人の設立・維持に必要な費用や役員報酬にかかる所得税など、一概に法人にすると税金が安くなるとは限りません。
海外FXの個人と法人の税金面の違いを正しく理解し、法人化するタイミングを検討する必要があるでしょう。
この記事では海外FXの法人化について、個人の場合の税金面の違いや法人化するメリット・デメリット、法人化がおすすめの人について解説していきます。
- 海外FX口座の法人化とは?税金面を比較
- 海外FXの法人口座のメリット
- 海外FXの法人口座のデメリット
- 法人口座がおすすめの人
この記事では海外FXの法人化について解説していきますが、前提としてWikiFXでは海外FXの利用をオススメしていません。
日本でFX事業を行うためには金融庁から正式な許可を得る必要があります。
しかし、海外FX業者は「ハイレバレッジ」や「ゼロカット」などのサービスを提供するためにあえて日本の金融庁に無登録のままFX事業を展開しています。
これは金融商品取引法違反であると同時に、多くのトレーダーが詐欺被害に遭うリスクを高めています。
したがってWikiFXでは国内FX業者の利用をオススメしています。
海外FX口座の法人化とは?税金面を比較
項目 | 個人口座 | 法人口座 |
---|---|---|
必要書類 | 身分証明書 住所確認書類 | 会社の登記簿謄本 取締役の身分証明書 取締役の住所確認書類 |
トレード条件 | 同一 | 同一 |
税金 | 695万〜900万円までは23% 900万〜1,800万円で33% | 800万円までの利益には15% 800万円を超えた部分には23.2% |
海外FXの法人化とは、法人を設立し、海外FX業者で法人口座を開設した上でFX取引を行うことです。
個人口座では自身の身分証明書と住所確認書類を提出すれば開設できますが、法人口座では以下の3点が必要です。
- 会社の登記簿謄本
- 取締役の身分証明書
- 取締役の住所確認書類
トレード条件については海外FXの場合は個人口座と変わりません。
ここでいう法人とは普通法人(株式会社や合同会社)、協同組合、公益法人、医療法人などが挙げられます。
海外FXで法人化する場合は、普通法人を設立し法人口座を開設する場合が多いでしょう。
また税金面についてもそれぞれ異なります。
課税される所得金額 | 法人税 |
---|---|
〜800万円に対して | 15% |
800万円〜に対して | 23.2% |
法人口座で海外FXを行った場合、年間で800万円までの利益には15%、800万円を超えた部分には23.2%が課せられます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額(円) |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000 |
一方、個人で海外FXを行った場合の税率は、年間で695万〜900万円までは23%、900万〜1,800万円で33%です。
そのため900万円以上の利益になると個人口座の方が税率が高くなり、法人口座の方が税金面ではお得と言えるでしょう。
ただし、個人の場合でも経費計上や控除など節税対策で課税対象となる利益を下げることが可能です。
詳しくは以下の記事をご参考ください。
海外FXの法人口座のメリット
ここからは海外の法人口座のメリットを解説していきます。
メリットとして以下が挙げられます。
- 個人よりも広い範囲で経費計上できる
- 個人よりも税率を下げられる場合がある
- 含み損を計上できる
- 他事業所得との損益通算ができる
- 10年間の損失繰越ができる
上記を抑えておくと、より法人口座の恩恵を受けられるでしょう。
それぞれ詳しく見ていきます。
個人よりも広い範囲で経費計上できる
法人口座では個人よりも広い範囲で経費計上が可能です。
個人では海外FXに関する費用を経費として計上ができます。
- 投資を勉強するセミナーや本
- トレードに必要なパソコン機器
- トレードしている自宅家賃の按分費用
など
法人の場合は個人で計上できる項目に加え、役員報酬や生命保険、退職金の積み立てなども経費に計上できます。
家賃に関しても、個人ではトレードに必要な分のみでしたが、自宅を社宅にすることで全額経費にすることも可能です。
また、厚生年金や社会保険への加入は控除の対象でもあります。
個人の場合、生命保険や個人年金などは控除の対象ですが、経費には含まれません。
そのため法人は個人よりも幅広い節税対策が可能になります。
特に個人事業主としてFXで生計をたてている場合、保険料を税引き後の利益から支払いますが、法人では経費にできるためかなりお得と言えるでしょう。
個人よりも税率を下げられる場合がある
海外FXを法人化すると、個人よりも税率を下げられる場合があります。
冒頭で解説したように、法人の事業所得税率は800万円までは15%、800万円以上の部分は23.2%です。
一方で個人の所得税は課税対象額毎に以下の通りです。
課税対象額 | 税率 |
---|---|
~195万 | 5% |
195万~330万 | 10% |
330万~650万 | 20% |
650万~900万 | 23% |
900万~1,800万 | 33% |
1,800万~4,000万 | 40% |
4,000万~ | 45% |
上記から分かる通り、海外FXの利益がおよそ900万円以上であれば法人の方が税率が低くなります。
細かく計算すれば850万円ほどから法人税の方が税金が安くなります。
海外FXの利益が850万円の時、
195万円×5%+(330万円-195万円)×10%+(650万円-330万円)×20%+(850万円-650万円)×23%=133万2,500円
納税額は133万2,500円
海外FXの利益が850万円の時、
800万円×15%+(850万円-800万円)×23.2%=131万6,000円
納税額は131万6,000円
このように利益の金額によっては、個人の所得税率よりも法人税率のほうが低くなる場合があります。
ただし、扶養や控除額、法人にかかるその他費用なども合わせた場合、最終的な税金が個人の方が安くなる場合もあります。
そのため、自身が計上できる経費や控除なども合わせて計算すると良いでしょう。
具体的な計算方法に関しては以下の記事で解説しています。
含み損を計上できる
含み損を計上できるのは法人化の大きなメリットと言えるでしょう。
海外FXの個人口座では決済済みのポジションの利益が課税対象ですが、法人の場合未決済のポジションの損益が課税対象です。
例えば確定利益が500万円ある状態で誤って200万円の含み損を抱えてしまった場合、個人であれば500万円にかかる税金を支払った上で、200万円の含み損も抱えなければいけません。
しかし法人であれば課税対象となるのは300万円ということになります。
これは個人と法人の大きな税金面の違いと言えるでしょう。
ただし、個人は確定申告の対象となる1月1月〜12月31日までの損益、法人は決算日までの損益となります。
他事業所得との損益通算ができる
法人であれば他の事業所得と損益通算が可能です。
個人の場合、海外FXの利益は雑所得に分類され、損益通算は同じ雑所得内でのみ可能です。
そのため会社員が海外FXで出した損益と給与所得を合算して、税金を抑えるということはできません。
一方で法人は事業所得の合計が課税対象となります。
そのため、海外FXで500万円の利益と他の事業で500万円の赤字が発生した場合は課税対象額は0となります。
このメリットを活かす場合、法人として不動産などを購入して最終的な利益を減らすといったことが可能です。
10年間の損失繰越ができる
海外FXで法人化すると、10年間の損失繰越が可能です。
例えば、前年に100万円の損失を被り、翌年に200万円の利益を出した場合、損失繰越をすることで利益を100万円に減らすことが可能であり、節税効果が見込めます。
国内FXでは個人でも3年間の損失繰越が認められていますが、海外FXでは個人の損失繰越は認められていません。
確定申告書を提出する法人の各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、各事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入されます。
国税庁
上記から分かる通り、損失繰越は青色申告した際の損失に限られ、また繰り越す年度まで青色申告を提出し続けていることが条件となります。
そのため、法人成りした年に前年の個人としての損失は計上できず、また損失を出した場合でも青色申告を提出しておく必要があります。
なお、損失繰越には上限があることにも注意しましょう。
海外FXの法人口座のデメリット
続いて海外の法人口座のデメリットを解説していきます。
デメリットには以下が挙げられます。
- 利益を自由に使えない
- 役員報酬にも所得税がかかる
- 設立費用が必要である
- 住民税や顧問料などランニングコストがかかる
- 税務調査に入られやすくなる場合がある
法人化したからといってメリットばかりではありません。
デメリットも押さえておかなければ、法人として優遇が受けられないどころか、反対に損をしてしまう恐れもあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
利益を自由に使えない
法人化のデメリットとして、利益を自由に使えない点が挙げられます。
利益分を生活費に充てる際には以下のことに注意する必要があります。
- 法人の利益は個人のものではなく会社のものなので、FXで挙げた利益を個人の生活費へ勝手に充てることはできない
- 個人の生活費として使用するためには、役員報酬として自身の給料にすることが必要
また、生活費に使用する以外にも利益分を個人的な出費に充てる際にも以下のことに注意する必要があります。
- 法人口座のお金を個人で勝手に使ってしまった場合、税務上は個人への貸付金となるケースがある
- 利用先を明記できないと勝手にお金を使用したということになり、銀行などの融資が受けづらくなる
- 会社の資金を勝手に利用したことを正しく説明できないと個人への臨時ボーナスとなり、法人の必要経費にならず、個人の所得税の対象にもなってしまう場合がある
このように、法人として海外FXで得た利益は、個人で自由に使うことができないのです。
また法人として海外FXで得た利益を個人で使うためには、役員報酬という形で支給される必要があります。
役員報酬の金額は自由に変更できるものではないため、会計管理や計画性、海外FXで利益を挙げるための一定の再現性などが必要と言えるでしょう。
役員報酬にも所得税がかかる
役員報酬に所得税がかかる点も法人化のデメリットと言えるでしょう。
先述したように、法人の利益は会社の利益であるため、個人で自由に使える利益は役員報酬、つまり給料として受け取る必要があります。
この給料には当然、個人の所得税がかかります。
せっかく海外FXで法人化したにも関わらず、ほとんどの金額を役員報酬にしてしまっては個人の所得税率と変わらず、法人化のメリットが受けられません。
そのため、個人の所得税と法人の法人税の税率を照らし合わせながら最適な役員報酬額を決める必要があります。
役員報酬は法人の経費になるため、役員報酬が多いと個人の所得税が高くなり、法人の利益は減るため法人税は安くなります。
専門的な知識も必要なため税理士に相談してみると良いでしょう。
設立費用が必要である
設立費用が必要な点は法人化のデメリットと言えます。
個人だと海外FXの口座開設は無料でできますが、法人化するには法人設立のための費用が必要です。
具体的には以下の費用がかかります。
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
定款用収入印紙代 | 40,000円(電子定款では不要) | 40,000円(電子定款では不要) |
定款の認証手数料 | ・資本金100万円未満:30,000円 ・資本金100万円以上300万円未満:40,000円 ・資本金300万円以上:50,000円 | 0円 |
定款の謄本手数料 | 約2,000円(250円/ページ) | 0円 |
登録免許税 | 150,000円または資本金額 × 0.7%どちらか高い方 | 60,000円または資本金額 × 0.7%どちらか高い方 |
合計 | 約230,000円〜 | 約100,000円〜 |
法人化するということは、ある程度の利益が見込めた上での税金対策の1つとして行う場合が多いです。
そのため設立費用を気にすることは少ないとも言えるでしょう。
ただし設立にあたっての定款の作成など、様々な手続きが必要になります。
住民税や顧問料などランニングコストがかかる
ランニングコストが必要な点も法人化のデメリットでしょう。
海外FXの法人化のランニングコストとして以下が挙げられます。
- 住民税
- 地方税
- 社会保険料
- 税理士など顧問料
海外FXの利益が見込めず赤字になった場合でもこれらはランニングコストとして支払わなければいけません。
海外FXのみで生計を立てている場合は、当然生活費もランニングコストとしてかかってくるでしょう。
また、損失字の青色申告をしておかなければ、翌年以降の損失繰越も受けられません。
このように法人としてFXをするためには一定のコストが必要になります。
大きな利益が残せた際はあまり使い込まずに、利益が出せなくなった場合のお金として残しておくのが賢明と言えるでしょう。
税務調査に入られやすくなる場合がある
法人化のデメリットには、税務調査に入られやすくなる場合があるという点もあります。
個人で海外FXをやっている分には対象になりづらかった方でも、法人化することで税務署のチェックが厳しくなる場合があります。
理由としては、法人化することで経費計上できる幅が広がったり、その他の事業の節税対策として行っている場合があったりと、税金が複雑に絡むことが挙げられます。
とはいえ、納税は国民の義務でもありますし、利益を隠したり、無理な節税をしたりすることは脱税に繋がる恐れもあります。
急な税務調査があっても問題ないように普段からしっかりと税金関連の管理をして、不安な場合は税理士に相談も検討すると良いでしょう。
法人口座がおすすめの人
以上のことを踏まえて法人口座がおすすめの人は以下の通りです。
- 海外FXで最終的な利益が900万円以上になる人
- 海外FXの利益を使い込もうと考えていない
- 税金周りの管理ができる人
- 海外FXにかける時間が多い人
原則として利益が900万円以上でなければ海外FXの税率が個人の税率よりも低くならないため、利益の大きさは重要なポイントです。
そのほか重要なポイントとして、役員報酬として受け取ることで所得税も発生することも押さえておく必要があります。
法人としての海外FXの利益を個人の給料として自由に使う予定がある場合は、個人のままでもあまり大きな違いはないと言えるでしょう。
まとめ:海外FXである程度の利益が見込まれる場合は法人化を検討しても良い
海外FXの法人化は税金面で個人よりも優遇を受けられる場合があります。
ただし、利益が見込めることが前提であり、また、法人化に伴ってその他必要な費用、税金面で理解しておく点が増えるなど、法人化にも様々なコストが発生します。
これらを踏まえた上で法人化を検討してみると良いでしょう。
また冒頭で解説したようにそもそも海外FXの利用には危険性が伴うため、WikiFXでは海外FXよりも国内FXの利用をオススメしています。
したがって法人化の際には海外FXよりも国内FXの法人口座を利用して、効果的な節税をしていきましょう。
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